第2回 乳がん〜統合医療と緩和ケア その1〜
女性のがんの中で最も多い乳がん。日本ではいま、約20人に1人は乳がんを経験すると言われる。貴峰道でも乳がん患者は増加しているが、治療方法の選択は患者自身に任せるというのが貴田晞照師の治療方針で、がん患者それぞれが選択した治療法において、ごしんじょう療法は統合医療や緩和ケアとして高い治療効果を上げている。2回にわたり、乳がん治療におけるごしんじょう療法をリポートする。
抗がん剤治療後、両乳房を切除
川崎市の会社員、山野百合さん(仮名、62歳)が、自己検診で乳がんの疑いを持ち始めたのは平成13年ごろ。しかし、ちょうどそのころから、母親の認知症が始まり、その症状はどんどん進行していった。母親の介護で会社を半休・早退することが増え、山野さんは自分のために病院に行く時間がとれなかった。ようやく病院へ行ったのが翌14年の秋だった。
「病院のエコー検査で、両乳房に4センチという大きながんが2個ずつ、計4個も見つかったんです。医師の意見をきき、すぐに抗がん剤を始めました」
約1年間の治療で、がんが1.5センチまで小さくなり、平成15年10月、手術で両乳房を全摘出。しかし山野さんは、手術によるダメージよりも、手術前後の化学療法の副作用に苦しめられたという。
手術前の抗がん剤治療で、頭髪は全部抜けた。
抗がん剤の副作用とされる痛み、吐き気、倦怠感、便秘、爪がはがれるなどの諸症状がすべて現れたが、とくにひどかったのは吐き気だった。
手術後も、化学療法の副作用で常に体がだるい状態だった。
つらい副作用がごしんじょうで消失
そんな中、数年前に会社の上司に勧められて体験したことがあるごしんじょう療法を受けてみようと思い立ち、平成16年3月27日、貴峰道を訪れた。
「治療していただくと、すごく体が楽になりました。ひどかった吐き気も完全になくなったのです」
ごしんじょう療法により、それまで苦しんできた治療の副作用から解放され、あまりに体が軽く楽になったため、山野さんは病院で手術や抗がん剤によるがん治療を続けながら貴峰道に通い、ごしんじょう療法で痛みや治療の副作用を取り除くという統合医療を長年実践している。
というのも山野さんは、最初に乳がんを摘出した後、肺への転移が分かり、両方のがんのための抗がん剤治療をしながら、度々肺がんの手術をしてきた。左肺は2度のがん摘出手術をし、右肺は上・中葉を切除したため、わずかに下葉が残っているだけだという。
「この6年間で6回も手術をし、絶え間なく抗がん剤治療を受けていますが、ごしんじょう療法のおかげで治療を断念することがありません。例えば、ごしんじょう療法を始めてからは、抗がん剤の点滴の時に入る吐き気止め以外に、個別の吐き気止めを一切飲んでいませんし、痛み止めの薬もあまり服用しなくてすむので、体への負担が大幅に軽減されました。肺がんのために呼吸が苦しく、首を絞められて生活している感じになることがありますが、ごしんじょうをすればスーッと空気が流れる感じになり、その場で呼吸が大変楽になります。『このまま死んじゃうんじゃないか』と絶望的になるほど強烈な痛みも、貴峰道で治療を受けるとスーッととれます。体調はいいので仕事もずっと続けています」
山野さんは、病院の診察日の金曜日に抗がん剤をし、土曜日に1時間半かけて代々木上原まで通う。
「坂をハアハア言いながら、這うようにして貴峰道に行くと、ごしんじょう治療後には嘘のように体全体が軽くなり、帰りはスタスタ歩いて帰れます」
また、手術後は体中あちこちが痛くなるが、「ごしんじょうをやると痛みがスコーンと抜ける」(山野さん)という。
統合医療としてのごしんじょう療法
貴峰道で治療を受けるがん患者は、山野さんのように、手術や抗がん剤など病院の治療とごしんじょう療法を併用する統合医療を実践している人が多い。皆共通して言うのが、「ごしんじょうがなかったら、がんの療法を続けられない」ということ。山野さんも、統合医療におけるごしんじょう療法の効果について、次のように説明する。
「私は化学療法を否定しません。ただ、手術や抗がん剤など、自分が納得する治療を受けるためには、治療の副作用を軽減する治療がなければ続けられないことを痛感します。痛みの場合、強烈ながんの痛みは鎮痛剤ではとれないし、たとえ薬で痛みが軽減したとしても体のだるさは残ります。ところが、ごしんじょう療法の鎮痛効果というのは薬の比較にならないほど絶大で、かつ即効性があり、しかも心身がとても爽やかになるのです。私の父は大腸がんで闘病しましたが、最後は痛みに耐えられず、モルヒネを打って亡くなりました。あの時、ごしんじょう療法を知っていたら…と思います。本当の意味で緩和ケアとなるごしんじょう療法しか、化学療法との統合医療として成立する治療法はない。がんの痛みや副作用に苦しむ多くの人に、ごしんじょう療法を知ってほしいと心から願っています」
山野さんは、自身でもごしんじょうを実践しており、痛い時や息苦しくなった時、自宅でも、入院した際の病室でも、職場でも、電車の中でも、いつもごしんじょうを出して使っているという。
母の認知症好転に感謝
「実は、私のごしんじょうは、自分自身のためだけではないんですよ」と山野さんが声を弾ませた。
山野さんによれば、約8年前からの認知症でグループホームに入居中の母親が、山野さんによるごしんじょう療法の施術によって、奇跡的に症状が好転しているという。
「母は要介護5の寝たきりで、私のことも認識できず、『う、う』としか言葉を発することができない状態でしたが、昨年7月、大腿骨を骨折し、1カ月間入院したのです。病院の規則で私が付き添いをすることになり、私は毎日母にごしんじょう療法をしました。すると、次第に言葉が出始め、退院する前には、私と会話するようになったのです。以前は話しかけても知らん顔していた母が、私が行くとニコッと笑い、夕方になると『遅くなると、暗いよー』と夜道を心配してくれる。長年の尿パットがとれ、今は自分で『トイレに行く』と意思表示します。母は昔と比べて小さく軽くなりましたが、今は自分で歩きます。本当に奇跡です。普通は骨折すると認知症は進むものですが、逆に症状が劇的に改善し、グループホームに戻るとスタッフに驚かれました」と山野さんは満面の笑みで語る。
ごしんじょう療法を開発した貴田晞照氏は、「万人を名医にする」を特徴のひとつに挙げている。その言葉通り、がんで闘病する山野さんが、母親の認知症を快復させているのである。
山野さんはいう。
「私のがん治療には、ごしんじょうはなくてはならないものです。それだけなく、ごしんじょうによって、母を治療することができ、母の回復によって再び親子の会話ができるようになりました。ごしんじょう療法をご指導してくださった貴田先生には本当に感謝しています。今の私の元気の源は、ごしんじょうです」
平成21年8月1日
久保田正子