第7回 医療の専門家に聞く
〜日本ペインクリニック学会認定医・麻酔科専門医、松村浩道医師〜
ごしんじょう療法の治療効果と即効性は、とりわけ痛みの治療で顕然となる。痛み治療におけるごしんじょう療法の可能性について、日本ペインクリニック学会認定医・麻酔科専門医の松村浩道医師(43歳)に聞いた。
痛み治療のペインクリニック
松村先生はペインクリニック科の医師ですから、痛みの専門家ということですね。
「そうですね。ペインクリニック科は、まだ一般的にあまり聞き慣れない名称ですが、ひと言でいえば"痛みのクリニック"です。ペインクリニック医は、痛みに対して総合的に診療し、従来の治療にとどまらず、さらに一歩進んだ治療も提供する痛みの専門家です。頭痛、頚部痛、肩こり、腰痛、膝の痛みなどの慢性痛の他、治療に難渋することが多い難治性の激しい痛みなど、あらゆる痛みが対象となります」
松村先生は精神医療にも携わっておられます。痛みに関わるメンタル治療もされるのでしょうか。
「私が精神医療を学んだ経緯を簡単に話しますと、最初は麻酔科医として、大学病院の麻酔科に在籍し、麻酔の技術を習得しましたが、その後、痛みに苛まれる方の助けになる技術を習得したいと思い、ペインクリニックで著名な病院で痛みの治療を学びました。そこでは、ペインクリニックのゴールドスタンダード、つまり西洋医学のペインクリニックでできる、現時点で最も効果が高いとされる治療法の基準が明確にでき、大きな意義を感じましたが、逆に言えば、基準から外れてしまった方たちを救う術が見つけられませんでした。ペインクリニックを受診される方は、24時間続く激烈な痛みを抱える人もいらっしゃり、そうした場合抑うつを伴っているケースが多いのです。また、痛みに対する囚われ、誤った認知を抱いてしまっている場合もあり、精神療法的アプローチの必要性も感じました。このように、痛みの治療にはメンタルケアが必要不可欠だと考え、本格的に精神医療を学んだわけです」
ペインクリニックの主な痛みの治療は?
「さまざまな方法を駆使して、痛みを少しでも軽減しようというのが基本方針ですが、ペインクリニックでは医師が麻酔科と兼任していることが多いという流れから、局所麻酔薬を用いた『神経ブロック』が主力の治療法になっているのが一般的な特色です。そこにさまざまな『薬物療法』や『理学療法』などを併用します。また私の場合には、それらに加え、精神療法的アプローチや、ブリーフセラピーと呼ばれる心理療法などを積極的に取り入れています。難治性疼痛の場合、痛みの治療は大変難しいですから、医師がどれだけ多くの治療の引き出しを持っているかは重要なことと考えています」
ごしんじょう療法で頚椎症が治り、鼻がスーッと
痛みの治療として、ごしんじょう療法を知ったのですか?
「昨年夏ごろ、『ペインクリニック』という痛み治療の学術誌に、代替医療の特集でごしんじょう療法のことが掲載され、初めてごしんじょう療法の存在を知りました。医療法人社団明徳会福岡歯科会長で福岡歯科統合医療研究所所長の福岡明医学博士がごしんじょう療法を紹介していたのですが、『邪気をとって痛みをとる』という初めて聞く理論に、とても興味を覚えました」
それで貴峰道に?
「ええ、治療を受けたいと思ったのです。当時、私は頚肩腕症候群で、左の首から腕にかけて痺れを伴う痛みがありました。星状神経節ブロックや頚部硬膜外ブロックなどをしたいと思うほどの痛みでしたが、そうした神経ブロックは自分自身ではできないので、消炎鎮痛薬の内服や牽引、ビタミンB12製剤の静注などをずいぶんやりました。それでも良くならなかったので、だましだましやっていくしかないと思っていました。そのような時にごしんじょう療法を知ったので、昨年9月に貴峰道の治療予約を入れ、初めて治療していただきました」
ごしんじょう治療の治療効果はいかがでしたか?
「最初の治療時に一番驚いたのは、実は鼻だったんです。ごしんじょう療法は、例えば首の治療で訪れたとしても、すべての患者さんに全身治療をするんですね。貴田先生が『すごい邪気ですね』と言って私の鼻の辺りにごしんじょうを当てた時に、ビリビリビリっと強烈な痛みを感じ、次の瞬間に鼻がスーッと通りました。正直驚きましたね。その頃私は鼻閉気味で、その日も鼻が多少詰まっていたのですが、鼻が通るようになったのは、何しろごしんじょうで痛みを感じたその瞬間でしたから。初診時に症状などを書く用紙にも、頚腕症のことしか書きませんでしたし、鼻閉のことは話していませんので、ごしんじょうが悪い部位を探り当てるということにも驚きました。
首の痛みの方もずいぶん楽になり、翌月にはごしんじょうを譲っていただいて、自分でもごしんじょう療法を実践し、また取りきれない部分は毎月貴峰道で治療していただきました。おかげさまで、痺れを伴う強い痛みがなくなり、今では全く普通に過ごせるようになりました」
なぜ痛みがとれるのか、医学的には説明不可能
現在も月に1回、貴峰道に治療に通っているそうですが、ごしんじょう療法の治療現場をご覧になっていかがですか?
「とにかく驚きの連続で、正直言って初めは信じられませんでした。全てを拝見させて頂いているわけではありませんが、これまでアトピー性皮膚炎、さまざまな難病や末期がんの方などが、ごしんじょう療法で良くなっているのを拝見しています」
貴峰道には痛みに苦しんで治療にくる人も多く、例えば、ハント症候群による三叉神経痛で、毎日60錠もの薬物治療、1000回以上の星状神経節ブロック、無けいれん性電撃療法など、いずれも効果がなく、10年間も激痛に苦しんだ男性が、わずかな回数のごしんじょう療法で痛みが改善した症例もあります。
「その症例は、痛みの専門医として非常に驚きますね。神経ブロックを1000回以上行う例は聞いたことがなく、よほどの難治性疼痛だったのでしょう。それが、ごしんじょう療法であっという間に改善したことは、通常の西洋医学的な常識から言えば、全くあり得ないことです。東洋医学的にもあり得ないのではないでしょうか」
ある末期がんの医師は、鎮痛剤でとれない激しい疼痛に苦しめられていましたが、ごしんじょう療法によって痛みがその場でとれ、家族の方が継続的にごしんじょう治療することで痛みがない状態で仕事ができるようになりました。がんの痛みを取り除く緩和ケアとして、ごしんじょう療法は多くの方の助けになっています。
「それも医学的常識では考えられないことです。ペインクリニックでは、がんの痛みに対して、局所麻酔薬を使う通常の神経ブロックとは違い、腹腔神経叢(ふくくうしんけいそう)ブロックやくも膜下フェノールブロックなど、神経破壊薬を使用する半永久的なブロックを行うことがありますが、これらは血圧の低下や運動障害などの合併症を引き起こす可能性があります。
また、最終的にはモルヒネ等の麻薬を投与することになりますが、WHOの基準でも麻薬を段階的にしっかり使うことを推奨しています。いきなり高容量用いると呼吸抑制などの副作用があって思わしくないのですが、モルヒネをきちんとした増量法に沿って処方すれば、天井効果(有効限界)はない、と言われます。ただ、実際に臨床の場では、そうは言っても、モルヒネを相当量出せば、患者さんはボーっとしたり、寝てしまったりしてしまい、日常生活の質は低下してしまいますよね」
ごしんじょう療法の場合、副作用がなく痛みを即時的に除去するのが最大の特長ですが、なぜ、ごしんじょう療法で痛みがとれるのだと思いますか?
「西洋医学的な見地で言えば、とにかくあり得ないとしか言いようがないですね。痛みについては、分子生物学的にはだいぶ分かってきた部分もあり、例えば、難治性の疼痛について言えば、痛みは長く続くことによって、脊髄レベルで中枢性感作が行われてしまうことが知られています。具体的には、脊髄の後角という部位でのwind-upと呼ばれる可塑的な現象などですが、非常に少ない刺激でも興奮してしまう反応が起こるとか、脊髄後角で痛みの情報に対しての記憶化が行われることなどが分かってきています。ただしそれらは痛みの一部分でしかなく、まだまだ未知な部分も多くあります。
ではなぜ、ごしんじょう療法で難治性の疼痛が良くなるのか、分子生物学的な痛みのメカニズムでは全く説明できません。無理に説明するとすれば、ごしんじょう療法によって、脊髄後角での変化が正常化してしまっている、ということにでもなりましょうか。」
貴田晞照氏のごしんじょう療法の理論はもっとシンプルで、痛みの本質である邪気を取り除くことによって、痛みが消失するとしています。邪気は今、東洋医学の中でさえ見失われていますが、ごしんじょうで誰もが的確に分かり、取ることさえもできます。貴田師の例えですが、指にトゲが刺されば神経を介して脳で痛みを感知します。トゲを抜けば、痛みが治まりますよね。それを今の西洋医学では、指の痛みを脳や脊髄で説明しようと一生懸命に研究しているけれども、トゲが分からないからトゲが抜けない。ところが、ごしんじょう療法では、そのトゲを見つけることができ、抜くこともできるから痛みを取り除けるのだと。ごしんじょう療法でやっていることは、トゲを抜いているにすぎないと。トゲと例えたものは、邪気ということになります。
「なるほど、非常にシンプルな理論で、感覚的によく分かります。私は長年武術をやっておりますが、その経験から、本質というものは常にシンプルだと思っていますので、今の貴田先生の理論や例えは、私にはピンとくるものがありますね。貴田先生の著書を勉強し、邪気という概念を理解しましたが、治療を受けると邪気というものを実感できます。ただし、邪気を取り除いて痛みをとるという理論は、西洋医学的には説明がつかないとしか言えませんが」
松本元博士こそ真の科学者
以前にごしんじょう療法の研究に着手された脳科学者の故・松本元博士を取材した際、松本先生はごしんじょう療法を絶賛した上で、「貴田先生はごしんじょう療法の理論の正しさを、病気を治すという結果で実証しているから、何を言ってもいい。貴田先生の理論については、私が一生をかけて科学的解明をしたい」とおっしゃっていました。
「実は私が貴田先生の著書を拝読した時に、松本先生の論文が掲載されていたので驚きました。松本先生は、不可能とされたイカの人工飼育を世界で初めて成功させた偉大な科学者で、人工飼育はその後、ヤリイカの神経興奮機構の解明に役立ちました。生理学の中でも特に神経の伝達の仕方や興奮の伝わり方を習う神経生理学の分野では、松本先生のイカの研究が多くの教科書に書かれていました。私は学生時代に神経生理の本を通じて、松本先生のお名前を存じていました。それほど、松本先生はご高名な素晴らしい科学者であられたのです。今の科学者や我々医師の少なからずは、自分のベースになるところ、自分の科学の拠り所とするもの以外の概念が出てきた時、どうしてもそれを否定してしまいがちです。かつての私もそうでした。でも、分からないというだけで否定することなく、ごしんじょう療法のように再現性のあるものに対しては、人が何と言おうと信念を持って研究に着手する、あの松本先生の態度こそが、真の科学者の態度だと思います。ですから、ごしんじょう療法を通して、私の松本先生に対する尊敬の念は、さらに一段と大きくなりました」
松村先生は今年8月、大峰山を登拝されたとか。
「すばらしい体験でした。山を登った達成感だけでなく、体自体が爽快になったのを実感しました。私は武術をやる時に、極力思考を捨て身体感覚にゆだねるよう努めるのですが、そうした身体意識を通してとらえた大峰山の雰囲気は、非常に厳粛なものであり、ごしんじょうの原点がここにあるということを感じさせていただきました。昔、修験道の行者は、山で得た力を里で病気治療という形で発揮したわけですが、大峰山には医療の原点のひとつがあるとも感じました」
病院でごしんじょう療法を実践中
松村先生は、医療現場でごしんじょう療法をされているのでしょうか?
「はい、一部の方に対してではありますが、痛みの治療で実践させていただいています。例えば、ある方は変形性膝関節症で膝の痛みがあり、私のところでしばらくの間ヒアルロン酸の関節内注入を毎週1回やっていましたが、ある程度良くなってからは横ばいの状態が続きました。その患者さんにごしんじょうを見せて『こういうものがあるんですが、試してみますか?』ときくと、試したいと言うので施術しました。すると、膝の辺りをごしんじょうでさすっている時に、患者さんが『あっ今、足の親指と人差し指から、むにゅむにゅむにゅっと何かが走って抜けていきました』とおっしゃいました。私は事前にごしんじょう療法の理論や邪気が抜けるなどの説明を全くしていませんでしたから、驚きました。あ、これはきっと痛みがとれるなと直感しましたが、その通り、翌週、その患者さんは『膝の痛みがなくなった』と驚いていました。それ以来、その方には毎回ごしんじょう療法をやっています。
もちろん、試させて頂いたすべての方に対してこのような効果が上がっているわけではありませんが、私もまだ使い始めたばかりですので、治療技術の未熟さがあるでしょう。治療精度を上げていくのは今後の課題ですが、ペインクリニック医として、実に頼もしい治療手段を手にさせて頂いたと、このご縁に感謝しております」
病院でごしんじょう療法の治療費はどのように扱っているのですか?
「『ごしんじょうだけやって』という患者さんもいまして、正直困っているのですが(笑)、ごしんじょう療法はあくまでも診療の一環として他の治療と併合して行っており、医療費はいただいていません。ごしんじょう療法を現在の保険診療の枠組みで提供するのは難しい状況です。また混合診療が原則禁止になっていますので、例えば先の膝の患者さんに対して、『ヒアルロン酸の注射は保険診療で、ごしんじょう療法は自費で』ということもできません。
ごしんじょう療法が科学の理論で証明されれば、今の医療の制度に組み込まれることもあるかもしれませんが、それはおそらく先のことになるでしょう。しかし、痛みに苦しんでいる患者さんがいれば、あらゆる治療方法を駆使してその患者さんの痛みを和らげることが我々ペインクリニシャンの責務ですから、今後もごしんじょう療法は実践していきたいと思っています」
うつ病治療にもごしんじょう療法を
松村先生は、精神医療にも携わっているそうですが、今、うつ病の方が増えているそうですね。
「今後、ますます増えると思います。来年3月に認可される予定ですが、現在私が中心となり、NPO法人『うつ支援ネットワーク』を立ち上げる準備をしています。うつ病の方が人に相談しにくい社会情勢もあり、今、うつで苦しむ未通院の方がとても増えています。そのような人たちを支援する活動をしていくため、医師を中心として、薬剤師、看護師、精神保健福祉士、カウンセラー、キャリア・コンサルタントなどがメンバーとなり、組織しています」
そのNPO法人で、具体的にどのようなうつ病支援をするのでしょうか?
「例えば、うつ病あるいはその予備軍の方に、今の自分の状態を把握していただくための自己チェックを携帯電話やパソコンでできるようにすることで、うつ病の早期発見や、通院促進を図ります。また、回復促進、生活基盤の整備、回復後の社会復帰に関しての支援活動も行います。同時に抑うつを原因とする自殺の抑止にも積極的に取り組み、また抑うつに対する差別・偏見・誤解を無くし正しい知識を普及させるための啓発活動も展開したいと考えています。
それから、欧米では薬物療法と並んで車輪の両輪と言われる精神心理療法が日本ではあまり行われない現状がありますが、それには、日本での保険点数の事情が少なからず影響しています。そうしたなか、カウンセラーによるカウンセリングは保険診療が認められていないために、心理療法を希望される方は全額自費でカウンセリングを受けているのが現状です。うつ病治療の敷居を低くして、うつに悩んでいる人が、より効果的な治療を受けられるしくみを作りたいと考えています。また、うつに対して治療効果が期待される代替補完医療の開拓・検証・紹介などについても取り組みたいと思っています。貴峰道にはうつ病の方も多く治療に来られ、短期間の治療で改善されていますので、そのNPO法人の活動でも、ごしんじょうの理論や、自分自身で出来る治療などをコラムの形で情報提供したり、また患者さんがご希望された場合は、実際に貴峰道をご紹介させて頂くなど、貴田先生にはぜひご協力願いたいと考えています」
貴田師はごしんじょう療法の実践から、電磁波との関連や「脳の電位」でうつ病を説明しています。電磁波などから過剰の電磁気エネルギーを受けると、「脳の電位」が高まり、気の流れが停滞するからうつ病になるのだと。また、過剰に溜まった気が一気に流れるのがキレる現象であると。
「その理論は非常に分かりやすく、斬新ですね。うつ病はエネルギーが不足していて元気がない状態だと思われがちですが、貴田先生の理論では、『うつ病は頭に気が過剰で、溜まり過ぎているから脳神経が正しく働かない。脳の電位を下げると脳神経は正しく働くように機構化されている』というものです。そして、うつ病もキレる現象も原因は同じという考え方は、これまでにない新しい視点です。今後、うつ病と電磁波との関連性が科学的に研究されるかもしれません。
痛みに対してもうつ病に対しても、西洋医療では薬物や麻酔薬など『加える』治療をしていますが、ごしんじょう療法は、貴田先生の理論でいうところの『邪気』を『抜く』という非常に新しい考え方の治療法です。そして、何よりも、ほかの何にも似ていないワン・アンド・オンリー、唯一無二の治療法です。医療家として、私はそこに感銘を受けるし、治療効果も本当に素晴らしいものです。私はそう遠くない将来、ごしんじょう療法が医療変革を起こす可能性もあるのではないかと思っています」
平成21年11月9日
久保田正子
ごしんじょう療法を行う治療院、施術所は全国各地にありますが、本療法は習得度によって治療効果に大きな差があります。中には高額の施術料を請求している施術所もありますが、貴峰道とは一切関係ありませんのでご注意ください。地方で施術を受けたい方は、必ず貴峰道にお問い合わせください。