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電磁波の健康被害
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電磁波の健康被害

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10年後、電磁波症候群が襲う

「妻が脳腫瘍で死亡したのは携帯電話のせいだ」
米国フロリダ州に住む男性が、1992年4月に、NECアメリカ社など携帯電話製造会社を相手取って起こした訴訟が、思わぬ波紋を広げている。騒ぎのきっかけは、訴え出た本人が最近CNNテレビに出演したことだ。
原告の言い分は、
「妻が数年にわたり毎日長時間、携帯電話を使用した結果、電話からの電磁波が生体に悪影響を与え、脳腫瘍になって死亡した」
と、かなりショッキングな内容なのだ。
「携帯電話と電磁波と脳腫瘍。一体どんな因果関係があるのか?」
首をひねる人も多いだろう。しかし、電磁波の人体への悪影響については、米国を中心とした海外の科学者によって、5千例以上の報告がなされている。リポートの一部を紹介するのは後回しにして、そもそも電磁波とは何なんだろう。
本誌で「DNAミステリーツアー」を掲載している科学評論家・佐川峻氏に聞いてみた。
「放射線、光、電波を総称した呼称」
なんだそうだ。だからX線も電磁波である。さらに詳しく説明すると、
「電磁波は、電界と磁界が相互共存しながら振動して伝わる波動のこと」
で、周波数(波長)の違いによって、分類される。周波数の高いほうから、放射線、紫外線、可視光線、赤外線、マイクロ波、ラジオ周波、超低周波など――。なかでも近年、関心が高まっているのが、マイクロ波以下の人工的な電波なのだという。
こうした人工的な電波は、テレビやラジオ放送、通信電波に限らず、あらゆる電気製品、OA機器、送電線から放射され続けている。しかも、ハイテク社会の進展に伴い、地球上の電磁波は年々増えているのだ。
もし、本当に電磁波(電波)が人体に悪影響を与えるとしたら、人類は絶滅の危機に向かって歩んでいることになるのではないか。海外の科学者の報告を見てみると、決して大袈裟な話ではないと思えてくるのである。
例えば、スウェーデンのカロリンスカ研究所は、
「送電線の近くに住み、弱い電磁波にさらされている子供は、白血病にかかる割合が通常の4倍にもなっている」
という調査を発表し、送電線からの電磁波の悪影響を指摘した。
米国のジャーナリストのポール・ブローダー氏が、89年に雑誌『ニューヨーカー』に発表した“メロウ通りの厄災”といわれる悲劇もそのひとつ。コネティカット州ギルフォード市郊外にあるメロウ通りには9軒の民家が並ぶが、その住人4人が次々と白血病、脳腫瘍で死亡。近くにある高圧送電線が"犯人"だというリポートである。
電気技師、電話架設工など、電磁波にさらされる仕事を続けていると、男性でも乳がんになりやすいという報告をしたのは、ワシントン大学のポール・デーマス教授。ラット実験では、乳がんの発生を抑制する働きのあるメラトニンというホルモンの生成を、電磁波が阻害したと報告している。
また、近年、注目され始めた「テクノ・ストレス症候群」は、パソコン、ワープロなどのVDT(端末表示装置)からの電磁波が原因の一つといわれる。目の疲労、肩凝りのほか、はなはだしい時はキーボードを操作するOLが流産するという説まである。
こうした事例を列挙していくと、電磁波“悪魔説”はかなりの説得力を持つのだが、科学的にはまだ因果関係は立証されてはいない。
「病気の人間を調べるなかで、共通要素として『電磁波』が導き出された。これは疫学調査の結果が主流であって、動物実験などによって再現性が確認されてはいない」(財団法人「電力中央研究所」)
とはいっても、電磁波が人体に悪影響を与える場合があることは確かなようである。多量に浴びたら、放射線はがんを誘発し、遺伝子を損傷するし、紫外線は皮膚がんや白内障を、可視光線でさえ、眼精疲労を導くのだ。

眼球やこう丸が特に危ない!

電磁波被害の研究者として知られる山梨医科大学の中原英臣助教授は、こう警告する。
「実験データがないからといって電磁波が“シロ”とは言えない。むしろ、さまざまな疫学調査は人体への悪影響を予想させる。確かに、携帯電話からのマイクロ波は、出力が1ワット程度と微弱ですから、常識的には、人体への影響はないだろう。しかし、この波長は、ちょうど、眼球の大きさに吸収されるものであり、脳細胞に無害だとも言い切れない」
中原助教授によると、電磁波には、(1)熱効果と(2)非熱効果の二つの大きな作用がある。
熱効果とは、あるものが電磁波のエネルギーを吸収し、組織の温度が上がる作用のことだ。人体で影響が特に問題とされるのは、眼球やこう丸。たとえば、電子レンジのドアが開いていたりしてマイクロ波が目に照射されると、目のレンズ部分の温度が上昇し、白内障が発症する場合がある。これは典型的な熱効果で、卵の白身が熱で白く固まるメカニズムと同じである。
他方、非熱効果とは、特定の細胞に影響を与える作用を指す。「遺伝子を構成している4つの塩基は、鎖状になり電子とイオンでくっついている。ある電磁波の影響を受けて、遺伝子の塩基が損傷を受けないと言い切ることはできないでしょう」(中原氏)というわけである。が、この方面の研究はほとんど進んでいないのが現状という。
電磁波の人体への悪影響は海外では、意外に早い時期に認識されていたようで、旧ソ連(現CIS)では安全基準が59年に作られている。その後、各国が基準作りに進出し、WHO(世界保健機関)は84年にガイドラインを作成。遅ればせながら日本でも郵政省が90年に「電波利用における人体の防護指針」を発表している。
防護指針に照らすと、携帯電話の電磁波は、有害と定めた最低基準の十分の一程度で、「問題はない」(NEC広報部)ことになる。さらに、国内の送電線周辺に住む人も、「送電線の真下で傘を開き、その柄に触れてもびりっと感じない電界(3キロボルト/メートル以下)になっていて、基準値とは一、二ケタ違うほど低い値に抑えてある」(財団法人「電力中央研究所」)そうだ。
本格的な研究が進んでないとはいえ、不安を抱いている人は多い。88年から電磁波をカットするベストやエプロン、フィルターの製造販売をしている日清紡(本社・東京)は、
「ここ数年、コンピューター関連会社やソフト会社、パソコン教育を始めた学校関係者、パソコンマニアからの引き合いが多い。疑わしきは、防いでおこうという発想からなんでしょうが、商品の人気は高まっています」
と話している。

「電子レンジの中は覗かない」

ところで、身近な電磁波は、本当に安全なんだろうか。研究者らの意見を総合すると次のようになる。
「電磁波の強さは距離の2乗に反比例するので、テレビは、離れて見るほうが良い」
「万一に備え、電子レンジの中は覗かないほうがいい」
「携帯電話、コードレス電話の周りは放射状に電磁波が出てる。心配な人はコード電話を使っては」
「電気毛布は電界強度が高いから、気をつけたほうがいいかも。妊婦の影響を心配する意見もある」
「ポケットベルは電磁波が微弱だからまずは大丈夫」
「上空からシャワーのように降るBS(衛星放送)の電波はどうしようもない」――。
一方、金沢工業大学の雨宮好文教授は、
「米国で弱い電磁波を猿の目に照射したところ角膜内皮が損傷したという報告があるんですが、同じ実験を私の研究室で行ったら、何の変化もありませんでした。実験によってまちまちの結果が出ているのが現実です。研究はきちんとすべきですが、安全基準以下の電磁波であれば、ことさら騒ぐ必要はないのでは・・・」
と語る。
ともあれ、ハイテク社会の進展は、ここ十数年のことだ。このため研究者の多くは、電磁波による人体への悪影響があるとすれば、顕在化するのは10年、20年先のことだろうと、予想している。電磁波症候群などという新語ができる前に、科学的に明快な結論を導き出してほしいものである。

矢崎公二
(『サンデー毎日』 1993年4月11日号)