英紙が報道 ホント?
今や中高生らの必携品にまで普及した携帯電話が、人間の健康を害する可能性があると、14日付英紙サンデー・タイムズが報じた。衝撃報道の内容によれば、携帯電話からはマイクロ波が放出され、動物実験では脳腫瘍(しゅよう)の成長を促進するなど、頭部に影響があるとしている。放出量はあくまで微量で、メーカー側は健康に影響はないとしているが、同紙では「頻繁な使用は控えるように」との科学者のコメントを引用。今後日本にも波紋を広げそうな話だ。
(国際電話、共同)
メーカー側「害はない」
「携帯電話を頻繁に使う人は、かなりダメージを受けているかもしれない」英紙サンデー・タイムズの衝撃記事は、いきなり不気味な警告から始まっている。さらに、「マイクロ波は最大70%も頭に吸収されている」とズバリ指摘し、見出しには「デンジャー!(危険)」の文字がでかでかと飾る。
同紙によると、携帯電話はアナログ、デジタルの両方式とも、電子レンジで使われているのと似たマイクロ波を使用しているという。当然、その量はごくわずかで、周波数も異質。これまで、そのマイクロ波は頭部に均等に吸収されるとされていたが、最近の調査で、頭骨内部の一定部分に集中することが判明した。
米国の研究では、携帯電話と同種のマイクロ波をネズミの頭部に照射したところ(1)デオキシリボ核酸(DNA)配列に異常が出た(2)脳腫瘍の成長を促進する可能性がある――などの結果が出たといい、いよいよ携帯電話による“健康侵害説”が現実味を帯びてくる。
マイクロ波といえば、オウム真理教が遺体焼却装置にも転用した電磁波の一種。非常に強力なマイクロ波であれば、人体にあてた場合「体内の水分が完全になくなり、ミイラ状になる」(電子工学専門家)という。携帯電話のマイクロ波放出基準設定に当たっている科学者によれば、多くの携帯電話から漏れ出ているマイクロ波は100〜600ミリワットと、ごく微量だが、「頻繁な使用は控えるように」と、この科学者は警告する。
同紙によれば、メーカー側は放出量が微量であり、あくまで健康に影響はないとの立場を取っているが、電話本体の素材の工夫で放出量を90%抑える新型を既に開発している、とホッと胸をなでおろさせてくれる内容にも触れて締めくくっている。
検証もう一度必要か
斎藤成文・東大名誉教授(マイクロ波工学)
「電磁波が身体に影響があるというのは10年ほど前から指摘されていた。私が郵政省の電気通信技術審議会の会長を務めていたころの検討課題でもあった。結局、電磁波による身体への影響を完全には立証できなかった。携帯電話はここ数年で一気に普及し、身体への影響も含め新たな問題が出てきているのを耳にする。身体への影響については、脳に近いところで電磁波が出ているのだから、もう一度検証する必要があるかもしれない」
(1996.4.15付報知新聞)