異常が発見されたのは昨年10月です。
アメリカで、養蜂家の巣箱で飼われているミツバチが30〜90%も減ったとの報告が全米各地から相次ぎました。
それがやがて全米30州以上に拡大し、今ではヨーロッパにまで拡大しました。具体的にはドイツ、スイス、スペイン、ポルトガル、イタリア、ギリシャ、英国から被害が報告されています。アメリカの西海岸の被害はその地域全体の60%、東海岸では70%に達し、相当な打撃を与えています。
遺伝子操作植物説なども
なぜこうした現象が起こるのか正確なことは誰にもわかっていません。
消えたハチはどこにも発見されません。また通常、集団失踪後の巣箱に残った蜂蜜や花粉をねらって、寄生虫や野生生物や他のハチが来ますが、どういうわけか失踪巣箱に寄りつきません。
ダニ説、寄生虫説、地球温暖化説、遺伝子操作植物説など、さまざまですが、携帯電話説も有力な原因と見なされています。携帯電話の発する電磁波が、ハチのナビゲーション(航行)能力に干渉し、ハチの帰巣本能を邪魔しているため、というものです。この説を支持する証拠はいくつか報告されています。
ドイツの研究では「送電線周辺でもコロニー崩壊が起こる」としています。
食糧難につながる由々しき事態
アインシュタインはかつて、「世界の穀物収穫量の多くはハチの花粉媒介(受粉)に依存している。もしハチがこの世から消えたら、人類は4年も生きられないであろう」と警告しています。
このミツバチ集団失踪は「メアリー・セレステ号のミツバチ版」と言われています。
1872年にニューヨークを出帆した帆船メアリー・セレステ号が4週間後に大西洋上で発見されましたが、帆船も食料も無事なのに乗組員だけがなぜか消えていた、という有名な事件を想起させたからです。
携帯電話の電磁波の危険性を証明するには10年以上かかる、と言われています。
しかしそんな悠長なことをしている間にミツバチが消え、穀物収穫に打撃を与えてしまえば、取り返しがつかない食糧難が招来するかもしれません。
原因究明に全力をあげると同時に、予防的視点からさまざまな対策をとることが、とても大事な気がします。
大久保貞利(電磁波問題市民研究会事務局長)
(『食品と暮らしの安全No.221』 2007.9.1発行)