身近な電気製品のリスクを提起
WHOは1996年から国際電磁波プロジェクトを設立し、電磁波の健康への影響について研究を進めてきましたが、今回、電気製品や送電線から出る極低周波電磁波についての新しい指針を発表しました。
携帯電話や基地局などの高周波については、2008〜09年に環境保健基準を発表する予定です。
今回の環境保健基準文書は、英文で466ページに及ぶもので、特徴を挙げると以下のようになります。
1.対象は0〜300キロヘルツまでの低周波領域とした。
2.平均して0.3〜0.4マイクロテスラ(3〜4ミリガウス)を常時被爆すると、小児白血病が約2倍となる疫学調査(研究)を支持し、「小児白血病と電磁波の関係は否定できない」と言及している。
3.電磁波と健康被害のメカニズムは未解明であっても、被害の未然防止の観点から、イタリア、オランダなどの例をあげて、各国が法規制を含めた対策をとるよう勧告している。
4.具体的に、電気製品とそこから発する電磁波数値を挙げ、身近な電気製品にリスクがあることを提起。
今回の環境保健基準は当初、昨年の秋に出される予定でしたが、一部の文章表現をめぐってWHO内部で意見が分かれ、延び延びになっていました。
私の手元に未発表の草案がありますが、そこでは「磁場曝露と小児白血病の関連証拠は弱い」となっています。ところが、発表された文では「関連は否定できない」と、より積極的な表現になっています。
曝露低減のための法整備を
WHOの環境保健基準の勧告は加盟国に対し強制力はありません。しかし、送電線と住宅や学校など、子供が一定時間滞在する施設の間に一定の距離を設けるなどの対策(イタリア・オランダ等)を紹介。
また、電気製品から出る電磁波量の表示を義務づけることなど、電磁波被爆低減のための適切な予防措置をとることは合理的であるとし、各国が法律を整備するよう求めています。
WHOの環境保健基準の意義は重要です。共同通信社が相当力を入れて配信したため、多くの地方紙が1面トップで大きく報じました。ところが、全国紙では、毎日新聞と日経新聞が小さく報道しただけで、朝日新聞と読売新聞ではまったく報道されませんでした。
大久保貞利(電磁波問題市民研究会事務局長)
(『食品と暮らしの安全No.220』 2007.8.1発行)