送電線から発生する電磁波が小児白血病の発症率を上げることは、これまでの数多くの疫学調査で確認されてきました。
ただ白血病の中でも小児白血病は、治る可能性が高いガンの筆頭に上げられ、適切な治療によって、70%以上が治療可能だといわれています。しかし、電磁波にガン促進作用があるとしたら、治療中に電磁波を浴び続けることで治療率が下がる可能性が考えられます。
小児白血病にかかった子どもたちの治癒率、生存率に対する電磁波の影響を、アメリカ、カリフォルニア州の公衆衛生研究所のフォリアート博士たちのグループが、世界で初めて調査しました。
1996年9月から2001年1月にかけて急性リンパ性白血病と診断された小児患者1672名のうち、386名の子どもたちを対象に、自宅療養中の子ども部屋の24時間の磁場のデータを入手。
その後2004年12月までの治療の経過のデータから、部屋の磁場の強さによって治癒率や生存率が変化しているかを調べました。
3ミリガウス以上で死亡率は4.53倍
調査の結果、小児白血病が再発したり、別のガンが発生した件数は、1ミリガウス以下の小児患者たちに比べて、
2ミリガウス未満の子どもは1.25倍、
3ミリガウス未満は1.32倍、
3ミリガウス以上は1.92倍と、増加。
これらのデータは統計上ばらつきが大きく、偶然の可能性を否定できません(統計上有意差がない)。しかし、死亡率だけで比べてみると統計的に有意差がみられ、3ミリガウス以上の子どもは1ミリガウス以下に比べ、4.53倍の死亡率になりました。
フォリアート博士は、論文の中で「これまで病気の進行に関する電磁波の影響を調べた調査はなかった。もし磁場がガン腫瘍の成長を促進するとしたら、再発率や生存率にもその影響が現れるのではないかという仮説をたてて調査してみた」と、この調査の新しさを述べています。
今回の調査では3ミリガウス以上の子どもたちの数が19人(全体の5%)と少なく、結果については再確認する必要があるとしながらも、論文は、電磁波が小児白血病の再発や死亡率に影響する可能性があることを裏付けるデータだと結論付けています。
病気中こそ、電磁波の影響については気を使う必要がありそうです。
子ども部屋の電磁波について注意する必要がありますが、病院の中の電磁波も、気になるところです。
植田武智(ジャーナリスト)
(『食品と暮らしの安全No.205』 2006.5.1発行)