2mGでも乳ガンを促進
実験を行ったのは、ドイツのゲッティンゲン大学産婦人科のレイナー・ギルガート博士たち。
乳ガン細胞にさまざまな濃度のタモキシフェンを投与し、それぞれに、さまざまな強度(0、2、12、1000mG=ミリガウス)の50Hzの周波数の電磁場を7日間浴びせます。この手法で、タモキシフェンの乳ガン細胞抑制効果が電磁場によって変化するかを調べました。
その結果はグラフのとおり。電磁場を浴びせない場合(0mG)、タモキシフェンの濃度を上げるにつれて、乳ガン細胞の増殖率は抑えられていきます。しかし、そこに電磁場を浴びせると、タモキシフェンの効果が弱まり、同じ効果を上げるために投与量を増やさなければならなくなりました。
それどころか、2mGの電磁場の場合、0.1μM(マイクロモル)の濃度のタモキシフェンでは、逆に細胞増殖が26%も上昇しています。電磁波を浴びせることで、乳ガン治療薬が逆にガンを促進してしまうことになるのです。同様の作用は12mGでも現れています。
また不思議なことに1000mGと12mGと比べると、12mGの場合の方が大きな影響が出ています。弱い電磁場の方が作用が強いという「ウィンドウ効果」が現れているのです。
処方用量で乳ガン促進の可能性
現実の治療でタモキシフェンを使った場合に、影響が出る可能性についても論文では触れています。乳ガン治療で処方されるタモキシフェンを飲んだ場合、血液中のタモキシフェンの濃度が1μMになります。そのときに、12mGの電磁場を浴びると、乳ガンは、逆に増殖してしまう可能性があるからです。
植田武智(ライター)
(『食品と暮らしの安全No.201』 2006.1.1発行)