電波が心臓の働きをかく乱?
心臓など循環器系や神経系の組織は、体内で発生する電気信号でコントロールされています。外部からの電磁波が体内に同様の電気信号を起こした場合、心臓や神経組織の働きがかく乱される可能性は否定できません。
特に日常的に強い電磁波を浴びる職業の人たちへの影響が懸念されます。
アメリカでは、電力会社の職員を対象にした疫学研究で、強い電磁波にさらされるほど不整脈と心筋梗塞の死亡率が上昇するという結果が出ています。(不整脈で2.4倍、心筋梗塞が1.6倍)。
一方、送電線以外の電磁波、特に放送電波の影響は、旧ソビエト連邦によって1950〜70年代に多くの研究がなされていますが、その結果の多くは西洋世界には紹介されていません。ソ連崩壊後、ロシアや東欧諸国ではソビエト時代の研究を再度西洋科学の手法で再検討するという作業が行われています。
今回の研究は、ポーランドのボートキエティック博士たちによって行われたもので、テレビ、ラジオ局に働いている職員の間で、心臓機能の異常が起きていないかを調べたものです。
ポーランドのテレビ・ラジオ局では、VHF(30〜300MHz)とUHF(300〜3000MHz)の周波数帯の電磁波が使用されています。
テレビ・ラジオ局職員71人と、関連産業で電磁波を浴びていないグループ42人を比較しました。血圧は、携帯型24時間血圧モニター機器を使い仕事中と夜間の変動もチェック。
高血圧の割合が3.2倍
その結果、電磁波を浴びている職員たちの方が、高血圧の割合が3.2倍程度多いという結果でした。
また単に血圧が高いというだけでなく、血圧を調整する心臓機能に異常が出ていることも判明。一般的には、血圧は日中が高く、就寝中は低くなるという変動が認められます。しかし、電磁波を浴びているグループでは、夜間になっても血圧が下がらない率が2.3倍多かったのです。こうした異常は、浴びている電磁波の平均値が高いほど、また職歴が長いほど多くなるという関連がありました。
ボートキエティック博士たちは、「今回確認された心機能の異常が、疾患を生じているかを確認する調査が必要だ」と述べています。
日本では心臓疾患はガンについで死亡原因の第2位。年間約15万人(総死亡者数の15%)が亡くなっています。放送施設の職員を対象にした疫学調査が望まれます。
植田武智(ライター)
(『食品と暮らしの安全No.194』 2005.6.1発行)