国際ガイドラインを超える可能性
都市型の、人口が多くビルが林立した地域では、大型の中継基地局ではうまく全体をカバーできず、携帯電話が使えない地域が出てきます。そこでカバーエリアが狭い小型の基地局をいくつも設置するようになっています。
イギリス政府の放射線防護委員会(NRPB)は、小型・低出力局の周辺の電磁波環境を測定し、データを公開。最大でも国際ガイドライン値の8.6%と、比較的安全という結論でした。
しかし市民団体パワーウォッチは、データはいかさまだと批判。政府の測定の対象となったのは、高さが10m以下、出力が5W以下のもの。しかし、高さが10m以下の基地局の中には、5W以上の出力を出しているものが全体の6%もあります。それらの周辺では電磁波はもっと強いと思われますが、政府は測定対象から外しているのです。
パワーウォッチのレポートでは、「高さ10m以下の小型局の中には、出力100Wと20倍のものもあり、その場合、国際ガイドラインの172%になる可能性がある。それらの基地局について緊急に測定し、データを公開する必要がある」と批判しています。
また、そもそも国際ガイドラインがいかに過剰であるかを、普通の人にもイメージできるようにと電波強度を交通速度にたとえて説明しています。
ザルツブルグ市の予防的防護値を、市街地の法定速度である時速48kmとみなした場合、国際ガイドライン値は、ジャンボジェット機をはるかに超える値。一方携帯電話の通話に必要な最低値は、カタツムリよりはるかに遅い速度なのです。
中継基地局に対する英国の規制は、「出力を実現可能な限り低く」という方針。しかし実際には守られていないとパワーウォッチは指摘しています。
場所と高さ、出力を公表せよ
小型局は、ビルの壁、看板の裏などに隠れるように設置され、一般の住宅の窓に直面している場合も多いと言われています。イギリスの場合、基地局のデータがインターネットで公表されているので、電磁波が強そうな場所を推測することが可能です。
しかし日本では、情報は一切公開されていないため、思わぬところで電磁波にさらされている可能性がないともいえません。最低でもイギリスのように中継基地局の位置、高さ、出力のデータを公表するべきです。
植田武智(ライター)
(『食品と暮らしの安全No.193』 2005.5.1発行)