「8歳未満の子どもには、絶対携帯電話を使わせるべきではない」
イギリス政府の放射線防護委員会(NRPB)は、1月に「携帯電話と健康」という報告書を公表。その記者会見で、委員長のウィリアム・スチュアート卿が、子どもの携帯電話について警告しました。
「携帯電話の有害性が証明されたわけではないが、もし危険だとしたら子どもへの影響が懸念される」
今回の報告書は、5年前に出されたものの改訂版。「携帯電話の有害性について、まだ決定的な証明には至っていないが、この5年で有害な可能性を示す証拠は増加した。引き続き予防的アプローチが必要」という内容です。
5年前の報告書でも子どもへの携帯電話の使用について言及。保健省はその勧告に従い、「16歳未満の携帯電話使用は、緊急時に限定」というパンフレットを作成し、携帯電話売り場で配付していました。
しかしこの5年で、5〜9歳の子どもたちの間での携帯電話の普及率は5倍にまで増加。ウィリアム卿たちは、「政府の勧告は、無視されている」と考え、特に8歳以下の子どもは原則禁止すべきという内容のコメントを行ったと見られます。
その記者会見の翌日に、全国学校長協会が、学校での携帯電話使用禁止を発表。
また、企業の中からも、予防的観点から対策をとる動きが出てきました。5ヶ月前から4〜8歳児向けの携帯電話を販売していた企業が、政府の会見を受けて、販売の中止を決定しました。
中継基地局や電磁波過敏症にも言及
この4〜8歳児向けの携帯電話は、子供への犯罪防止上の理由から販売が開始されたもの。子どもが緊急時に使うという用途のためだけに作られたもので、通話できる相手先も親が事前に登録した5件のみに限定したものです。
中止を決定した記者会見で、販売代理店は「私たちはこの商品は安全だと判断しています。しかし、ごくわずかな可能性だとしても、私たちの商品が子どもの健康リスクになる可能性があるとしたら、受け入れられないだろうと考え、販売中止を決定しました。子どもをターゲットにした商品を扱っている他社も、私たちの決定に従ってくれることを望んでいます」
今回の英政府の報告書では、中継基地局の問題についても「学校の近くに建設するのは望ましくない」と言及。
また、「電磁波に特に感受性の強い人たちもいる可能性を考慮する必要がある」と電磁波過敏症の存在を考慮した注意が必要とも言及するなど、一歩進んだ内容になっています。
植田武智(ライター)
(『食品と暮らしの安全No.192』 2005.4.1発行)